2011年07月13日

小規模建築物基礎設計指針は何を言おうとしているのか

小規模建築物基礎設計指針は何を言おうとしているのか

木造の4号建築の基礎を簡略的に設計するための指針であると私は理解していた。
指針では、小規模建築物の定義として、@地上3階以下、A建物高さ13m以下、B軒高9m以下、およびC延べ面積500u以下の条件を満たすものとされている。
建築学会構造委員会が独自の学術的見解に基づいて、ひとつの推奨指針としてまとめたものという位置づけであり、法的な規制力を持つものではないと書かれている。
法的な諸規定に優先し、あるいはこれらを補足しようという意図を持っているものでもないとも書かれている。
小規模建築物における慣行も盛り込まれているそうである。

杭基礎にも言及されているが、パイルキャップを有さず、杭は鉛直荷重のみを支持するものとして検討され、水平抵抗は直接基礎の基礎底面と小口径杭の杭頭部あるいは地盤との摩擦抵抗について検討するものとされている。

適用範囲と設計法には、基礎の構造設計は、許容応力度設計法に基づいて行うとも書かれている。
小規模基礎構造設計指針は、小規模な建物の基礎を簡易的に行うことを目的としているのではないだろうか。即ち、上部構造は許容応力度計算を行わず、基礎のみを検討することを目的としていると考えていた。特に、木造4号建築の基礎を対象に考えられているのではないだろうか。
同指針の中には「簡易設計」の方法も示されているが、計算に基づく構造設計を推奨していると書かれている。
計算によるなら、小規模建築物基礎設計指針によらずとも、RC規準や基礎構造構造設計指針によれば良いのである。
小規模建築物基礎設計指針で唯一好ましい記述は、小口径鋼管杭の取り扱いが示されたことである。

基礎の設計方針の中に、地震時の荷重・外力に対して安全であるように設計すると書かれている。これは許容応力度計算を行うことを前提にすることになる。
N値計算で略算的に求めることも可能であるが、建物全体の偏心を荷重の偏在を考慮することはできない。
基礎の耐震設計の項目に、1)水平力としては、基礎直上階の水平せん断力に基礎に作用する水平力を加えたもの、2)鉛直力としては、転倒モーメントによる接地圧を長期荷重による接地圧に加減したもの、との記述がある。
こうなってくると、ますます許容応力度計算を行わなくてはならなくなる。

簡易計算における建物の荷重は、木造住宅の耐震診断の要領で略算的に単位面積あたりの荷重を求めることもできるようになっている。
略算とはいえ、梁のかけ方や、床根太の方向、屋根の状態なども考慮すると、許容応力度計算を行ったほうが手っ取り早い。

深基礎や偏心基礎についての記述もあるが、指針で適用範囲としている建物の基礎の場合、適度に直交方向の基礎梁もあり、ある程度ねじれに対する拘束効果をもつ。
ねじれにより生ずる回転力を、直交する基礎梁の偶力として処理することで解決することは、以前から行われている設計の定石である。
一方、ベタ基礎の場合にも、柱の短期軸力による接地圧の偏心を考慮すべきか、という議論があるが、支配面積の範囲で集中荷重を検討する程度で良いと私は判断している。
連続している版の一部を抜き出して計算してみても、安全側の答えにはなるが、現実的ではない。地盤をバネに置き換え、弾性支承上の梁の理論で解かなくては正確な解は得られない。計算方法は理解できるが、これも現実的ではない。難しい計算になってしまう。

posted by TASS設計室 at 19:26| 人気のページ