分業化は作業の分業であり、理解することを分業にしているのではない。
最も情報が集中するのは、代表となる意匠設計者である。構造や設備で計算の詳細は知らないまでも、概要は理解する。ところが、サブコンを加えた設計の総合定例で議論するのは設備設計と構造設計である。週に2日、あるいは3日、現場の設計室に行き、そんな調整の仕事を行っていた時期がある。意匠設計者が出てくるのは、施主が現場に来るときくらいであった。
コンクリート施工図は、専門の担当者が数人いるので、僕は構造設計に関する調整、施工図のチェックを行った。鉄骨工作図では、意匠のディテールの見直しや、SRC造の鉄筋孔のチェックを行うが、複雑なディテールの時は、加工や溶接に関してファブと議論した。鉄骨工場の設計担当は、A1の図面を抱えて現場に来た。設備のサブコンの設計担当も、よく設計室に来た。
総合定例では、設計監理者である構造設計者と相談したり議論したものである。
印象に残る構造設計の監理者は、日建設計のN氏、松田平田のO氏である。電卓で計算しながら、補正を行ったり、提案を行っていた。その後O氏とは構造技術者協会のセミナーでお目にかかった。建築構造士の試験を受ける時、O氏のアドバイスが有りがたかった。