建築設計者、特に構造設計者にとって、保有水平耐力計算と時刻歴応答解析のハードルが高い。時刻歴応答解析は何種類かの地震波を入れて計算するだけなので、計算そのものは明快だが、計算する機会がない。低い建物で蛇足のような計算は行ったことはある。僕は45mを超える建物は設計したことがない。
通常の仕事は1〜12階建ての全ての構造形式、高さ30m前後までである。その程度で間に合っている。
高さ60m以下の建物に適用する保有水平耐力計算は、1981年の新耐震から加えられてもので、1990年の建築学会の参考書に良いものがある。絶版になり、オークションでけっこうな値段がついている。
参考書や構造計算プログラムは完備しているが、未だに手を出せない人が多い。そのような人は木造建築の設計に従事している設計者に多く、木造4階建てが進まない一因にもなっている。
1981年の法改正以前に確立された技術で、コンピュータを使わなくても計算することができるようになっている。ちょっとしたコツを理解していただくが、出来る人は出来るが、出来ない人はいつまで待っても出来ない。
1981年以降で、1995年頃までに設計された建物は、手計算で保有水平耐力計算が行われていた。当時、コンピュータで計算するとひと晩かかっていた。夜の10時頃に計算をスタートさせると、翌朝出来上がっていた。時々エラーで止まっていたことを思い出した。