2022年09月29日

三ツ沢の杭について

一部のゼネコンを除き、現場監督に優秀な人が少ない。
横浜の三ツ沢で、杭が支持層に到達しないままマンションを完成させ、建物の沈下が確認されて建て替えたが、これは現場監督の不手際である。この問題点は次のように思われる。
@設計段階で、ボーリング調査の本数が少なかった。
最初に何本かボーリング調査を行うが、そこで支持層の深さが異なることに気づき、追加のボーリングを行うものである。
A杭を発注する際、支持層の深さを分類して整理するが、想定の範囲を超えてしまった。
B杭の施工時に設計通りに杭を打ったが、支持層に到達しないまま打ち止めにした。その際、杭の施工会社から現場監督や作業所長に対する報告がなされていると思うが、その後の対応が不適切だった。
C高強度の既製杭を使っていたため、継ぎ足すための杭を発注すると2か月かかることに気を取られていた。
D作業所長から構造設計者に報告し、対応策の指示を仰ぐことが必要だった。

そこで、僕が作業所長なら、杭打ちの当日は、次のように指示する。
・杭を支持層まで打たせる。
・杭頭レベルが下がるが、下がったままにして、その杭を完了させる。
・工程を遅らせないため、次の杭は予定通り打つよう指示する。
・構造設計者と対応策を協議する。
構造設計者としては、次のことを行う。
・柱を下方に延長し、フーチングを下げることを考え、長期鉛直支持力の余裕をチェックする。
・基礎梁と柱の立下げの間にバットレスを設ける。
・基礎梁の計算を見直す。
・杭を施工している間に、基礎梁の変更による計画変更の手続きの準備を行う。
・確認申請審査機関と適合性判定機関に一報を入れ、状況を伝えておく。

言われた通りのことしか出来ない現場なら、プレファブメーカーのような設計図書にするしかない。
現場からの電話での報告では、表現力に乏しい現場監督がいるので、話しができる担当者から連絡させることにしてもらう。僕は昔「頭の良い人に電話を替わってもらえ」と現場監督に言ったことがある。
言葉による表現力は、頭の良さが出るものである。
スーパーゼネコンでは、躯体工事の管理を行う現場監督は、ジョブローテーションで構造設計課から来た人や、構造設計の経験者が現場に異動していることがあり、話しやすい環境である。
posted by TASS設計室 at 18:07| 閑話休題