2022年09月10日

構造計算プログラムが使えない構造計算

構造計算プログラムが使えない、あるいはそのままでは使えない構造計算は小規模な建物に多い。
小さいから難しい。
@複雑な形状の擁壁や階段など、宅地造成に関する工作物
A外部鉄骨階段、外部廊下
B混構造(RC,WRC,S)
C小規模な斜面地の建物(RC,WRC)
D深基礎、高基礎
E地下車庫
F地下室
これらの構造は小さな敷地を利用するという命題に対応するため、設計者は様々な工夫をして設計する。
最初に成り立つことを確認するが、同時に工事費を睨んでおかないと、計画倒れになる。
簡単に考えている施主や意匠設計者がいるので、仮設工事と土工事で工事費が左右されるので、概算の見積りを出してから計画に入る。
斜面地の住宅で、意匠設計者は工事費のことを何も考えずに設計していたもので、僕が途中から構造設計を引き受け、確認を下ろしたものだが、工事費がかかりすぎて中断している。
最初に「本当に、これで構造設計を進めるのか」と聞いたが、「意匠が決まっているので、このまま進めたい」ということだった。僕なら全面的に設計を見直すし、そんな基本設計はやらない。
意匠設計者は1,500万くらいで出来ると考えていたようだが、僕は3,000万はかかるだろうと言っていた。
確認が下りて建設業者から見積りを取ったら5,000万だった。木造部分を除く地下工事の費用である。
平たい敷地で、2m程度の段差のところにはめ込むなら、意匠設計者が言うような金額で出来るだろう。しかし、高低差が5m以上ある小さな斜面地で、大型車が入らない道路では、仮設にコストがかかる。平らな敷地に建つ2階建て木造住宅専業の建築士が計画するには難しい設計だった。

posted by TASS設計室 at 16:52| 構造設計

混構造の2階床

混構造の2階床には木造の壁や柱が載るので、柱や壁の軸力や短期荷重時の集中荷重を考慮する際は、それらを受ける梁を大梁としてデータを入力する。大梁としてデータをつくり、そこに特殊荷重を作用させる。
長期荷重のみを受ける柱や壁は、床荷重に均してしまう。ただし、集中荷重が大きい場合は、個別にスラブの検討を行う。
このような方法で計算するので、混構造の1階がラーメン構造なら、鉄骨造でも鉄筋コンクリート造でも、同様に計算できる。
1階が壁式鉄筋コンクリート造なら「2x4壁式」で一発で計算できる。その際、設計方針に壁芯についての考え方を書いておく。2x4工法の壁芯と1階のWRC造の壁芯の寄り寸法が一致しないが、壁厚の範囲なら同一直線状の壁とみなすとし、2x4工法の壁芯を優先して通り芯を決める。
また、木造の壁芯や開口端の寸法は、小数点以下の数字が出てくることがあるので、数値を切り上げ、あるいは切り捨てを行うと書いておく。
職務熱心な審査係りが意匠図と構造図、構造計算書の数値の不整合と言い出すことを封じ込めるためである。
posted by TASS設計室 at 10:33| 木造の構造計算

建築構造設計を学ぶ順番

建築構造設計を学ぶ順番は
@構造力学
ARC造
BS造
C土質力学
D振動
であり、木造は最初から学ばない。何となく木造も設計するようになった。
構造に関する知見の多くはRC造とS造に集約されている。上記のBまでの人が多い。
WRC造はRC造の耐震壁と思えばよく、木造は鉄骨のブレース構造と思えばよい。
2x4工法はWRC造と似たようなものと理解する。梁・柱・床・壁・杭は全てに共通するので、どこかで見ておけばよい。
結局、RCとSが出来ると全てが出来るようになる。
posted by TASS設計室 at 04:48| 構造設計

両刀使い

木造の設計者は、軸組工法だけ、2x4工法だけという人が多い。
「両刀使い」になろうではないか。
それに一般建築 RC / SRC / S / WRC を加えると、混構造でも斜面地の建物でも、何でも設計できる。
意匠設計者は構造設計を行うわけではないので、設計可能な範囲は無限に広がる。規模が大きくなっても驚かず、1万uでも2万uでも設計すれば良い。
意匠設計者には構造詳細を理解して構造計画を行い、断面図と矩計図が描ける程度になってもらいたいが、エスキースの段階で、構造設計を先行するほうが分かりやすい。
posted by TASS設計室 at 02:57| 木造の構造計算

鉄骨造と木造軸組工法の混構造

鉄骨造と木造軸組工法の混構造は相性が良さそうだ。1階が店舗や倉庫などの場合にスパンを飛ばすことができる。鉄骨の梁芯と木造の柱芯を合わせるので、1階の外壁が外に寄るが、無理に外壁を合わせない。
引抜金物のディテールを工夫すると無理なく納まる。2階床はQLデッキとする。2階床に土台を並べ、柱の軸力の伝達を考える。
鉄骨造の部分は、杭や基礎を含み BUS-6 と BUS基礎 で計算することができる。上部の木造はルート2とし、1階もルート2とする。鉄骨造の1階部分なら、偏心率は0.15以下になるだろう。
倉庫の上を事務所にして、3〜4階をアパートにする計画が成り立つ。1階の階高は4〜5mにすることもできる。

posted by TASS設計室 at 02:43| 混構造

2022年09月09日

木造4階は、2x4工法か軸組工法か

木造4階は、2x4工法か軸組工法か建設コストを比較する。
ルート2でも設計可能な軸組工法は、保有水平耐力計算を行わなくてはならない2x4工法と比べ、保有水平耐力計算が苦手な設計者にとって有利である。
混構造の場合でも、下部構造の崩壊形まで気にせず、許容応力度計算だけで済ませることができる。
偏心率と剛性率の計算が加わるだけで、難易度は3階建てと大差がない。4階建てになると軸組工法に誘導されてしまうと言っていた2x4工法の会社があるが、軸組工法にしたい気持ちは良く分かる。

軸組工法でタイロッドを使うことも考えると、階高の沈み込みの影響が少なく、柱の脚部にめり込み防止プレートを使うことができるというメリットがある。軸組工法でも面材の耐力壁をつかうのだから、2x4工法と同じようなものである。
こうなったら、折衷案もよいではないか。2x4工法・軸組工法・鉄骨造を混合した構造である。
posted by TASS設計室 at 17:12| 木造の構造計算

2022年09月07日

ホールダウン金物

ホールダウン金物のアンカーボルトは、基礎に定着することを原則とする。
土台に取付けたい人が多く、メーカーにもそのような製品がある。木造の耐力壁の耐力を担保するものがホールダウン金物のアンカーボルトである。終局時の耐力を担保することを考えると、土台に取付けるホールダウン金物では終局時の耐力は土台に依存することになる。
木造の土台は腐ることがあることは、リフォーム工事の現場で見かけることがある。土台を取付けているM12のアンカーボルトは、入れ忘れた時にせん断力のみを負担するホールインアンカーを打つことがある。ホールインアンカーは引抜耐力が期待できない。
そのような理由から、ホールダウン金物を取付けるアンカーボルトは基礎梁に定着することを原則とする。
軽量鉄骨造の工業化住宅の評価が高いのは、アンカーボルトの設計がしっかりしていることも理由のひとつである。木造住宅の評価の低さの理由でもある。
ホールダウン金物を土台に取付けたいことは理解している。面倒だからやりたくない、という心理が働くことは分かるが、どうあるべきかを考えると異なる答えになる。
posted by TASS設計室 at 22:33| 木造の構造計算

山口県で建物の一部が倒壊

山口県で建物の一部が倒壊した。
この建物のオーバーハングした部分の架構の組み方を見てみたい。
構造力学上の欠点はなかっただろうか。
この時代の鉄骨造は溶接部が不完全なものがあり、耐震補強を行う際に溶接部のやり直しを行う設計を行ったことがある。ガウジングを行い欠陥部分を除去した上で、突合せ溶接のやり直しを行うのである。
それよりも優先することは、上部荷重を素直に下に流すことで、重力に逆らわないことである。1階に基礎を追加し、柱を入れることである。単純なことだが、それが最も安心できる。
この場所は支持層が深いと思われるので、杭が必要かもしれない。溶接で継ぎ足しながらスクリューパイル(鋼管杭)を打つ方法もある。小径に限るが軒下や建屋内でも杭を打つことができる。
オーバーハングした建物を恰好が良いと思う設計者や所有者がいるが、次の一手を考慮した設計にすることである。2m以上飛び出した部分は、鉛直方向の震度を1.0として、地震時の検討を行う基準が適用される。このくらいオーバーハングしていると、何らかの対策を施さないとクリアしないのではないか。マンションの耐震改修で、大きな庇の下に鉄骨の柱を追加したことがある。
この基準により、地震時ではなく常時荷重に対しても、強度が割り増されることになる。

庇の屋根について追記すると、積雪荷重に注意が必要である。
庇の上の壁面に吹き付けた雪が庇の上に落下する。積雪荷重に対する指針が改定されている。
posted by TASS設計室 at 19:17| 日記

ますます構造離れ

昔から傾向は変わらないが、構造離れが著しい。
建築学科に進むには数学と物理は出来て当たり前だが、出来ることは出来ても、それらは受験の手段であって好きではない人もいる。
構造設計に関して言えば、土木学科と建築学科を統合するほうが良いのではないかと思う。両方を学んだ上で、好きな道に進むのである。地盤や基礎、杭は土木と建築は共通だし、鋼構造やコンクリート構造も共通である。
僕は最初から建築学科を希望したが、土木出身の一級建築士もいる。たまたま海と陸の境界の構造物を設計することがあり、港湾基準による設計も行った。波力という建築では縁のないものもあるが、訳の分からない計算式て計算することに変わりない。建築構造では実験から求められた係数が使われるので、似たようなものである。
posted by TASS設計室 at 00:25| 構造設計

2022年09月06日

構造計算プログラムの入力項目

構造計算プログラムの入力項目を厳選する。
木造住宅の業界は、kizukuri、kizukuri-2x4 が主流のようだが、それらのユーザーにとって「2x4壁式」は難しい。入力項目が多すぎるのである。
語彙が少ない人に難しい本を読ませることができないように、構造計算プログラムも同様である。言葉を知らないし、知ろうともしないし、勉強しない。
どこに柱があるか分からないような図面が出てきてプレカットに丸投げという状態である。この段階の人に「2x4壁式」を使わせるのである。
逆の言い方をすれば、構造計算プログラムを使い始めて、分からないことに出合ったら勉強すればよい。
プログラムの説明書を、参考書あるいはハンドブック的なものにすることも考えられる。参照ページを示したり、ワンポイントレッスン的な記述を加え、学習参考書的な書き方にすると分かりやすい。
元出版社に勤めていた人で、構造計算プログラムの営業担当に話したところ、1万本売れているソフトウェアーでないと、本を出しても採算がとれないと言われた。JWWの参考書はたくさん出ていることからも理解できる。
本屋に並んでいる木造住宅の構造設計の本を見ると、初心者向けを意識しすぎ、平易に書こうとして失敗しているものがある。そのギャップを埋めることが必要だ。
建築士の受験予備校では、数学の補習授業を始めたら合格率が上がったという統計がある。
posted by TASS設計室 at 12:02| 2x4工法

2022年09月05日

木造住宅のアンカーボルトのセット

職人のぎっくり腰で、木造住宅のアンカーボルトのセットに行くことになった。
土台用のアンカーボルトと、ホールダウン金物用のアンカーボルトをセットするが、厚さ250のスラブ内に定着するものもある。アンカーボルトを現場で曲げるか、鉄筋の加工場で曲げてもらうか、どちらかにする。
棟梁と2人で作業する。70坪の混構造の住宅で、ボルトの本数が多い。鉄筋は僕に任せてもらいたい。
posted by TASS設計室 at 16:48| 木造住宅

反曲点高比0.5について考える

建物に生ずるの応力は、全ての部位で辻褄が合っていることが原則である。RC造、S造も同様で、2x4工法に最も近いWRC造も応力の均衡が保たれている。
ところが、2x4工法の壁は、反曲点高比0.5として応力計算が行われているが、マグサ(開口上部の梁)の短期荷重時の断面検定が行われておらず、単純梁として計算されているだけである。
僕が聞いた説明は、上部に床荷重が載っており、押さえ効果があるから、マグサ端部の短期荷重時のモーメントは釣り合っているとのことである。
それなら、そのような説明と、数値的な裏付けが必要である。四の五の言わず、反曲点高比を1.0として計算することにするが、一次設計の金物が大きくなる。
保有水平耐力計算では反曲点高比を1.0にするので、ルート3の計算が必要になる建物の場合は、保有耐力時の引抜金物で決定する。

ついでに言うと、基礎梁の計算では、壁の脚部のモーメントを基礎梁芯まで延長して計算するという、一般の建物では当たり前のことが、木造住宅では行われていない。
大勢に影響ないので、今のままで良いのかもしれないが、規模が大きくなったり、杭基礎を採用する場合は、一般の建物と同様の手順で設計したほうがよいだろう。


posted by TASS設計室 at 16:34| 2x4工法

2025年の法改正でルート1の範囲拡大

2025年の法改正でルート1の範囲が拡大される。
高さ16mというものである。
今までは法改正の際に、駆け込み需要というものがあったが、2025年は申請待ち、着工待ちが起きるのではないか。
木造は鉄骨造のルート1と異なり、面積の制限が無いので、耐火構造にすれば大規模なものを建てることができる。木造で3階建て高さ16mという法改正は、木造の商業建築、事務所、学校に用途を拡大することが狙いか。
そうなると、ハイブリッド構造の規準が必要になる。住宅産業の集まりである木造の業界にできるかな。
posted by TASS設計室 at 10:21| 構造設計

社内規定

僕の仕事の分野で言えば、社内規定にだけ詳しく従順な人は、会社こそ命で他流試合ができない人に多い。
多くのトラブルから学び、基準や規準の上乗せで社内規定ができた訳だが、その規定に盲目的に従順な人がいる。しかし、予算が合わないと、状況により、彼らはその規定に従わない。
根拠を知れば、それら社内規定は良くできたものであることは認める。僕はそれらをパクって、採用することがある。いいとこ取りである。
posted by TASS設計室 at 08:21| 閑話休題

ルート2の設計を一級建築士に開放する

高さ20mという制限付きでもよいので、ルート2の設計を一級建築士に開放してもよいのではないか。
ルート2で設計可能な建物と言えば、
@木造3階で軒高9mを超えるもの(2025年に改訂され、ルート1で可能になる)
A木造軸組工法4階建て
ルート3が多いが、ルート2でも設計可能なものは、
BRC造(ルート1で壁量が少し不足する場合)
CS造
※ 冷間形成角形鋼管を使ったルート2も可能だが、不経済なので、そんな設計はしない。
※ 鉄骨造はルート3が主流で、ルート1も採用しない。
※ 鉄骨造でルート1やルート2を採用するのは、適判を避けることが目的になっている。

posted by TASS設計室 at 01:16| 建築士

2022年09月04日

仕事に付加価値をつけるには技術者が必要

仕事に付加価値を付け、優先的に受注したいという2x4工法の材料業者がある。
何度か相談に応じたが無理であると判断した。僕が知る限り1社だけ技術力のあるコンポーネント会社があるが、一朝一夕にできた訳ではない。人材について話したが、そこまでは出来なくても、その2〜3歩手前くらいまでは出来そうだ。1歩手前は明らかに無理だ。ただし、人を集めることができることが前提である。
3歩手前の人材はコストパフォーマンスが悪い。独り歩きできないので、同程度の人を3人集めるしかない。
2x4工法の会社だが、構造設計者の採用条件として、広く一般に他の工法を知り、構造設計一級建築士を持っていることが条件である。構造一級はハンコが押せる程度でよいが、1人必要だ。
そこまで出来れば、中規模木造建築の分野では技術力で優位に立ち、受注が増加する。

posted by TASS設計室 at 21:49| 閑話休題

中断した工事の後始末と再設計

中断した工事の後始末と再設計を始める。
先ず、現状を把握し、最終形を睨んで設計する。最初は役所との調整で、問題点を洗い出す。
隣接地を加えることができるので有利になるが、手続き上の諸問題の解決の道筋をつける。
県や市の様々な部署が絡むので、各担当の顔を見ることから始める。
事業計画の要旨を僕が作文することになりそうだ。

ショッピングセンターの改修工事も始まる。9月になると足場が組めるので、足場が出来たら見に行く。
こちらも僕の専門が構造設計であることを知って、ゼネコンの誰かの紹介でまわってきた仕事である。
現場を歩いて、適切な方法を提案する。

どちらも意匠設計を介さない仕事で、骨格ができたら意匠設計者が加わることになる。こんな方法で設計すのだから、構造設計でも法規にも詳しくなる。昔から、構造設計と確認申請業務を引き受けている。

斜面地の設計で、無理な設計で予算オーバーになった建物が、現在どうなっているか興味がある。意匠設計者にはコスト感覚を身につけて基本設計を行ってらいたいものである。基本は自然に逆らわないことである。

posted by TASS設計室 at 11:43| 閑話休題

目的が与えられると熱心に動く

目的が与えられると熱心に動くが、その目的が適切なものかを考えない人がいる。
組織で仕事をしてきた人は、目的に異論を唱えることは出来ないと思っているようだ。だから時間をかける割りに設計がまとまらない。斜に構え、発注者や関係者を観察してみたらどうだろう。
言われたことを吟味し、添削するくらいがよい。
posted by TASS設計室 at 02:50| 閑話休題

2022年09月03日

頭が当たる階段

時々、頭が当たる階段の図面が送られてくる。ちょっと低いどころか、完全に当たるのである。断面図を作成しなくても分かるものだが、横着せずに断面図を描いてみることだ。階段の下を利用する際も同様である。
posted by TASS設計室 at 17:34| 木造住宅

RCラーメン + 2x4工法3層 + 塔屋

RCラーメン + 2x4工法3層 + 塔屋
最初は WRC + 2x4工法 なので、2x4壁式で計算できたが、この場合どう計算するか。
X方向は純ラーメン、Y方向は耐震壁付きラーメンである。
上部構造は 2x4壁式 で計算できるが、1階は BUS-6 で計算することになる。上部構造との荷重の受け渡しは手入力になる。剛性率と偏心率は1階の柱の剛性が等しくなるようモデル化して 2x4壁式 で計算する。
上部構造の荷重を伝達するため、2階に受け梁を設け、梁に対して長期・短期・終局時の荷重を作用させる。この計算が複雑になる。だから1本のプログラムで連動させると連続性がよい。
杭はスクリューパイルになりそうなので、BUS基礎 で計算できる。

posted by TASS設計室 at 11:48| 2x4工法